学問・資格

2011年5月14日 (土)

マネジメントと,人生

ビジネス界にドラッカーブームが盛り上がったかと思うと,
突如出てきたのが
岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(通称:もしドラ)
NHKでアニメ化され,次は映画化されるそうです.
そんなこんなで吹き荒れてるマネージメントブームですが,
正直な所,マネージメントには全く興味を持てませんでした.

が,色々あって
PMP(Project Management Professional)の勉強をはじめることになり
PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)を読んだわけです.
(ちなみに米Amazonのほうが安い…)

で,認識ががらりと変わったのがこの一文

"The amount of resources supplied from operations will vary from project to project."
(operationによってもたらされる資源の総量はprojectからprojectまでで修正される)

この一文だけだとワケがわからないですが,
企業活動にはProjectとOperationの2つがあるわけですが,
Operationというのはメーカの生産活動のような企業が続く限り続いていく事業
ProjectというのはOperationに対して影響を及ぼして変化させていく活動の事だというわけです.

平たく言うとProjectってのは
『現状をより良い方に変えていこうとする』活動というわけです.

で,ある生物学の先生から言われた言葉を思い出しました.
「生物というのは一般的に自分自身を環境に適応させていくものだけど
 人間は環境を自分たちに合うよう変えていく.
 それが人間という生物の特徴だ.」

この考えからいくと人間という存在自体が一種のProjectなんじゃないか,
Projectというもの自体が人間の本質なんじゃないか
それをマネージメントするってのはまさに「人生そのもの」なんじゃないか
そんな思いになってきたわけです.

というわけで今日もPMPの勉強のため神戸に行ってます.
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2011年5月 7日 (土)

技術士と,Professional Engineer

本Blogでは報告しておりませんでしたが,
技術士登録完了し晴れて技術士(機械部門)を名乗れることになりました.
また米Professional Engineerについても試験は合格し,現在州登録に掛かっています.
来年3月までには登録完了させたいと思っています.

機械設計者として技術士やPEといった資格を目指す意味というのは様々な場で議論されています.
そして「そんな資格は機械設計者には不要」という人も少なからずいます.
実際自分自身も直属の上長に同じようなことを言われ多少気分が滅入ったのも事実です.

しかし,実際試験勉強や資格取得後の様々な人の繋がりを通じて
自分自身の携わってきた業務についての客観的な分析や,
自分の知らない分野の様々な知見を得ることができたのは非常に大きな収穫だったと思います.

機械設計者は技術士やPEを目指すべきかと問われれば,
今は迷わず『Yes』という事ができます.
そしてできればなるべく若いうちに目指されることをお勧めします.

理由は
・試験はいずれも体力勝負
・大学で勉強した内容が頭に残ってる方が知識としては有利
・自分のキャリアプランを冷静に見直すことができる
といった点で若い人に有利だと思うからです.
無論若い人が取るにはそれなりの努力は必要になるのは事実ですが.
(過去の実績を問われる所もありますので.)

技術士について詳細を知りたい方は以下URLを
http://www.engineer.or.jp/c_categories/index01004.html

PEについては
http://www.jspe.org/01_11pe.htm
を参照してください.

もしアドバイス等必要でしたら
下名Twitter等でお声がけいただければご協力できる範囲でご協力致します

そうそう,そろそろ技術士二次試験の申込が近づいています.
業務経歴票から試験は始まりです.

2010年9月23日 (木)

モノと,魂

現在,放映中の大魔神カノンを録り貯めて観てます.
昔から特撮モノが好きで,大映の生み出したあの名作『大魔神』三部作のリメイクということで楽しみにしながら見てたわけですが,
本作はずいぶん趣が違った作品になってます.

大魔神というと
神をも恐れぬ暴君が人の道を踏み外した所,大魔神が現れて成敗するというのが基本的なプロットですが
今回は舞台を現代に移し人間に大事にされた道具や動物たちが年を経て化身して人間たちを助けるという物語構成です.
大魔神ことブジンサマも銅鐸の化身として描かれています.

#なんでオリジナルファンにとっては
#「こんなの大魔神じゃねぇ!」と言いたくなる気持ちよくわかります.

物語は実際見ていただいた方が楽しめるので
この辺りで語るのを止めておきますが,
このドラマを見ていてふと思ったことが一つ.

日本には年を経た道具が生命を持つという
「付喪神(つくもがみ)」と言われる器物霊の概念があります.

「陰陽雑記に云ふ。 器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑かす、これを付喪神と号すと云へり」『付喪神記』

これはモノを大事にしようという先人たちの教訓であると思うのですが,
同時に先人たちは道具自体が大事にすれば百年の寿命を持ちえると考えていた証拠であるようにも感じています.

さてそう考えた時に一つ愕然とする事実に気づきました.
自分は設計者としてものづくりに携わっています.
その設計するものに百年の寿命があると考えているでしょうか?
答えはNoです.
というより,そんな設計した日には間違いなく馬鹿と言われます.
適当な寿命が無いと買い替え需要は無いわけですし,
コンポーネントなんで装置より長い寿命があっても仕方ないのです.
でも自分の設計したものは百年後には存在せず
魂を得ることはないのではないか…
そう考えると悲しくもあり,悔しくもあります.

そんな視点で周囲を見回してみると
100年の寿命を想定されていない機器,
寿命が組み込まれている機器は周囲に溢れ返っています.
電子機器はほとんどダメでしょう.
百年使える道具というのは今や幻想になってしまったのかとさえ思われます.

魂のこもらない道具の技術の国に明日はあるのか?
と,ちょっと意地の悪いことを考えたりしてしまいます.

しかし,百年動かせる機械を作る.
ホント難しいなぁ…

2010年6月26日 (土)

有人と,無人

はやぶさの帰還で再び宇宙開発に注目が集まっています.

自分も昔から宇宙大好き人間でして
以前日本宇宙少年団の分団立ち上げのお手伝いをしたり,
大学時代は友人たちとつるんで衛星設計コンテストに参加し賞を頂いたり
好きの一念で日本や世界の宇宙開発を見てきました.
そんなひとりとして閉塞感のただよう中日本の科学技術分野に明るい話題が生まれ,
世相がちょっとでも明るくなる様子が嬉しくもあります.

以前のエントリで示しましたプロジェクトとしてみたときの疑念はさておき…ですが.

さて類は友を呼ぶと言いますか友人にも宇宙好き,宇宙バカが一杯います.(JAXA職員含む)
そんな彼らと話しているといつも話題となるのは

「日本はいつ有人宇宙飛行を始めるのだ!」

という話題です.
ただ自分は多くの宇宙ファンの皆様とは違って
現時点では2つの理由から有人宇宙飛行に軸足を置くべきではないと考えています.

1.コストが段違い
鳩山前首相の(確か)専門分野である信頼性工学を基に説明します.
(ちなみに信頼性工学はアポロ計画で加速した学問です.)

信頼性工学というのは簡単に言うと
そのシステムがどれだけ故障しないで動作するか(信頼度)を検討,改善する学問です.

アポロ計画に要求された信頼度は0.9999999
つまり一千万回に一回しか故障しない確率を求めたと言います.

人間が乗るか乗らないかで
この桁数がひとつかふたつ変わると言われています.
たかが0.0000099と数字上見えますがこの二桁が結構重いのです.

桁をひとつ上げるとどうなるか.
単純のために信頼度0.9と0.99を比較します.

信頼度0.9を確保しようとするとどうすればいいのか.
一番簡単にはそのシステムを10台作って
9台問題なく動作することを確認すれば残りの1台の信頼度は0.9です.

これを0.99まで引き上げようとすると
100台作って99台試験する必要があります.

つまり1桁上がると発生コストは単純計算でほぼ10倍となります.
(実際にはもう少し数学的手法で色々折り合いを付けますが…)

それ以外にも人間が宇宙空間で過ごせるだけの水や空気など
宇宙に運び出すものの量も段違いに増えます.
有人宇宙飛行は現状猛烈な金食い虫なのです.

スペースシャトルも宇宙機を再利用することで
この効率の悪さを克服しようとしたものでしたが思ったほど改善されず
引退を迎え従来の使い捨てロケットに取って代わられます.
(その使い捨てロケットもちょっとヤバいけど.)

2.ビジョンが不明確
有人宇宙飛行で投資額が大きくなってもそれに対するインカムが大きければいいわけですが
有人宇宙飛行の究極的なビジョンを描き出せていない気がします
誰でも簡単に宇宙に行ける時代が来たとしても
当初は物珍しさで行く人はいるでしょうが
そのブームは一過性で終わる気がします.

制約のある宇宙空間においては
リゾート地の高級ホテルのような快適性は確保できないでしょうし
みんなが宇宙に行く時代にあっては宇宙に行ったということはステータスにはならないでしょう.
せいぜいお父さんの一声で家族旅行して
子どもや奥さんから
「面白くなかった」
「同じ金をかけるなら温泉に浸かって,美味しいもの食べたかった」
と苦情を受けるのがオチのような気がします.

宇宙に行くことが目的ではなく,宇宙で何をするかなんですよね.

有人宇宙飛行に軸足を置かないならどうすればいいのか
自分は日本のお家芸である自動化技術,ロボット技術が鍵だと思っています.
人間を送り込まなくてもロボットや自動機に作業を肩代わりさせれば
現在の同程度の宇宙開発パフォーマンスの確保と
コストダウンが可能だと考えています.

そして比較的安価な無人技術で打ち上げ実績を稼ぐことができれば
信頼性を測るための母数が増え,信頼性を押し上げることになりコストも下がります.
この方がかえって有人宇宙飛行へは近道だと思います.

また無人でコストを下げることができれば
ビジネスや学術分野の参入障壁が下がり新しいビジョンを生むことに繋がるでしょう
インターネットも参入障壁が下がってこそこれだけのビジネスが誕生した次第です.
ぶっちゃけ儲からない事は長続きしません.歴史がそれを示してます.


自分が思う最悪の状況は
日本人が大好きな「危険を冒してやり遂げた!」という
無意味なヒロイズムと浪花節で優秀な人材を危険に晒すことです.

今,はやぶさで国民の支持を得たJAXAはその方向に舵を切りうると考えています.
なんせJAXAは宇宙に行きたい人々の一大集団ですから.

彼らには十分宇宙飛行を実現させる実力があると思います.
当初は成功により称賛を受けるでしょう.
しかしそのうち飽きられていくでしょう.
(アポロ計画も飽きられ予算がつかなくなって中断)
万一失敗でもした日には一気に醒めやすい世論に手のひらを返される可能性も高いです.
それでいてなし得たことは世界の二番煎じに過ぎないのです.

それなら今の日本にしかなしえないことをやってほしいと思うのですが…


同じような事を考えてる人はいるようで
NASAにRobonautというプロジェクトが結構昔からあります.

噂によれば宇宙飛行士たちから
「俺たちの仕事を奪う気か!」
と総スカンを食い干されてたらしいですが
最近GMとの協業が発表され活気づいています.
(あ,Twitterアカウントまでできてる…)

彼(彼女?)の活躍にも注目ですし,
叶うことなら自分の知識と腕でなんとか関れないかと切歯扼腕する日々が続いています.

さて,この話題で友人たちと議論が白熱してくると
酔った友人はこのような殺し文句放ってきます.

「ならお前宇宙に行きたくないんか!」

結果こっちも(ビール一杯で)酔いが回ってこう吠えることになります.

「そりゃ行きたいさ.
 でも俺体力も協調性もないし重量オーバな俺が宇宙飛行士に選抜されるわけねぇだろ.
 この方法が宇宙に行く一番近道なんだよ.」

2010年6月17日 (木)

はやぶさと、帰還

Twitterでもつぶやいていましたが考えをまとめました.
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大きく報じられている『はやぶさ』の帰還
いろいろ自分にとっても思い入れのある衛星です。
筑波で打ち上げ前のMUSES-Cに会ったことが(確か)ありますし、
ターゲットマーカには自分の名前も刻まれていました。
(百万人目指して呼びかけも手伝ったなぁ…)

そんな思い入れがあるからこそ
この異様に盛り上がっている『はやぶさ』ブームに少し違和感を感じています。

まずこの衛星をプロジェクトとして見た時
小惑星の岩石サンプルを確実に採取する(Quality)
当初予算内でプロジェクトを完結する(Cost)
当初予定期間でプロジェクトを完結する(Delivery)
全ての面で目標を達成しなかったということ。

その失敗したプロジェクトに第一線級の科学者、技術者を投入し、
巨額の設備や帯域、人件費を投じて運用を継続するという判断に至った所に
問題の根幹があるように感じています。

#まいど1号が月150万の運用費払えず断念に至ったのは記憶に新しい所
#はやぶさの運用はもっと高いはず。

なぜJAXAがプロジェクトを打ち切れなかったのか。
それはこのプロジェクトが丁度H-IIA6号機の失敗で
JAXAが大バッシングを受けていた時期と重なるのは無縁ではないでしょう。
H-IIAも成功率を語るには圧倒的に少ない打ち上げ回数に関わらず
この失敗が日本の技術力が地に落ちたと言わんばかりの報道がなされました。
折りしもITバブルもはじけ、この風評を受けたJAXAの予算も削られました。
こういった環境のなかで「失敗」と言えない風潮が生まれたのは想像に難くありません。

理想をいえばこの一線級のスタッフに運用予算と「はやぶさ2号」を与えて、
再挑戦させていればもっと確実にミッションを達成できたように思えるのです。
そうでなくても貴重な人材ですから他のミッションの推進の戦力になったはずです。

この「打ち切らない」という選択が当たって、
今回「はやぶさ」の帰還に至ったわけですが
この盛り上がりはH-IIAのバッシングの裏返しに見えるのです。
JAXA広報の演出もその点見事でしたが
それをしなけりゃならない所に問題の本質がある気がします。

宇宙開発は国家プロジェクトで科学技術の戦略のはず。
それを人気商売にせざるをえないって何かおかしくないですか?

ともあれ巨額の資金とリソースを費やして「はやぶさ」は帰ってきました。
アメリカにおけるアポロ計画ではその失敗から多くのものが生まれました。
その一部はシステム工学や信頼性工学といった学問分野にまで昇華されています。
「はやぶさ」の失敗から新たな概念や学問分野が生まれた時
初めてこの帰還に大きな意味が生まれるのだと思います。
決して浪花節で終わらせちゃいけません。

2010年6月13日 (日)

語学と,国際社会

「英語ができれば国際人なのか.」
というテーマを友人のブログから頂いた(勝手に持ってきた)ので
ちょっと考えてみることに.

下名の答えも"No"です.
あくまでそれはコミュニケーションの方法で,
その向こうに"人"がいることを意識しないといけない.
さらに言えば相手に敬意や感情伝えるためのprotocolを学ぶこと
それを裏打ちする思想を知ることが語学学習なんじゃないかなと思います.

先日,院のゼミ時代の友人から相談を受けました.
「一緒に仕事してる海外支社のエンジニアから苦情のメールが来た」
というのです.
どうやらメールの表現に"must" "should" "can" "had better"を多用し,
結構親しくなってきてるのに未だに"Mr.****"と書き続け,
溜まったフラストレーションが爆発した模様.

#そのメールへの返信は "Hi bro.! What's up?" で書き出せとアドバイスしたのはここだけの話.

結構コミュニケーションを成立させるだけでも大変です.
決して悪気がなかったとしてもこれだけの行き違いが起きうるのです.

ましてや敬意を欠けばもっと行き違いは起きてしまう.
中国ホンダのスト事件が先日ありましたが
外国人を単なる「安い労働力」と見なすことが本当に国際理解に繋がるのか
あるいは日本における風俗産業に従事する外国人女性.
彼らの国のことに,彼らの言葉のことに
何人の日本人がどれだけ意識を払っただろう.
そう考えるとなんだか情けない気分になるのです.

平凡社ライブラリーのオマル・ハイヤーム『ルバイヤート』(岡田 恵美子 訳)に,
こんなエピソードが載っていました.
訳者の岡田さんが日本に出稼ぎに来ているイラン人の前で講演した際
最初に受けた質問は日本への不満ではなく
「日本で有名な詩人の墓を知りたい」
だったそうです.
「モスクはないからせめて詩人の墓の前で祈りたい.俳句でもいい.」
と彼らは言ったそうです.
えらい違いだと思いません?

相互理解に基づく国際社会の実現はなかなか難しいようです.