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2010年6月26日 (土)

有人と,無人

はやぶさの帰還で再び宇宙開発に注目が集まっています.

自分も昔から宇宙大好き人間でして
以前日本宇宙少年団の分団立ち上げのお手伝いをしたり,
大学時代は友人たちとつるんで衛星設計コンテストに参加し賞を頂いたり
好きの一念で日本や世界の宇宙開発を見てきました.
そんなひとりとして閉塞感のただよう中日本の科学技術分野に明るい話題が生まれ,
世相がちょっとでも明るくなる様子が嬉しくもあります.

以前のエントリで示しましたプロジェクトとしてみたときの疑念はさておき…ですが.

さて類は友を呼ぶと言いますか友人にも宇宙好き,宇宙バカが一杯います.(JAXA職員含む)
そんな彼らと話しているといつも話題となるのは

「日本はいつ有人宇宙飛行を始めるのだ!」

という話題です.
ただ自分は多くの宇宙ファンの皆様とは違って
現時点では2つの理由から有人宇宙飛行に軸足を置くべきではないと考えています.

1.コストが段違い
鳩山前首相の(確か)専門分野である信頼性工学を基に説明します.
(ちなみに信頼性工学はアポロ計画で加速した学問です.)

信頼性工学というのは簡単に言うと
そのシステムがどれだけ故障しないで動作するか(信頼度)を検討,改善する学問です.

アポロ計画に要求された信頼度は0.9999999
つまり一千万回に一回しか故障しない確率を求めたと言います.

人間が乗るか乗らないかで
この桁数がひとつかふたつ変わると言われています.
たかが0.0000099と数字上見えますがこの二桁が結構重いのです.

桁をひとつ上げるとどうなるか.
単純のために信頼度0.9と0.99を比較します.

信頼度0.9を確保しようとするとどうすればいいのか.
一番簡単にはそのシステムを10台作って
9台問題なく動作することを確認すれば残りの1台の信頼度は0.9です.

これを0.99まで引き上げようとすると
100台作って99台試験する必要があります.

つまり1桁上がると発生コストは単純計算でほぼ10倍となります.
(実際にはもう少し数学的手法で色々折り合いを付けますが…)

それ以外にも人間が宇宙空間で過ごせるだけの水や空気など
宇宙に運び出すものの量も段違いに増えます.
有人宇宙飛行は現状猛烈な金食い虫なのです.

スペースシャトルも宇宙機を再利用することで
この効率の悪さを克服しようとしたものでしたが思ったほど改善されず
引退を迎え従来の使い捨てロケットに取って代わられます.
(その使い捨てロケットもちょっとヤバいけど.)

2.ビジョンが不明確
有人宇宙飛行で投資額が大きくなってもそれに対するインカムが大きければいいわけですが
有人宇宙飛行の究極的なビジョンを描き出せていない気がします
誰でも簡単に宇宙に行ける時代が来たとしても
当初は物珍しさで行く人はいるでしょうが
そのブームは一過性で終わる気がします.

制約のある宇宙空間においては
リゾート地の高級ホテルのような快適性は確保できないでしょうし
みんなが宇宙に行く時代にあっては宇宙に行ったということはステータスにはならないでしょう.
せいぜいお父さんの一声で家族旅行して
子どもや奥さんから
「面白くなかった」
「同じ金をかけるなら温泉に浸かって,美味しいもの食べたかった」
と苦情を受けるのがオチのような気がします.

宇宙に行くことが目的ではなく,宇宙で何をするかなんですよね.

有人宇宙飛行に軸足を置かないならどうすればいいのか
自分は日本のお家芸である自動化技術,ロボット技術が鍵だと思っています.
人間を送り込まなくてもロボットや自動機に作業を肩代わりさせれば
現在の同程度の宇宙開発パフォーマンスの確保と
コストダウンが可能だと考えています.

そして比較的安価な無人技術で打ち上げ実績を稼ぐことができれば
信頼性を測るための母数が増え,信頼性を押し上げることになりコストも下がります.
この方がかえって有人宇宙飛行へは近道だと思います.

また無人でコストを下げることができれば
ビジネスや学術分野の参入障壁が下がり新しいビジョンを生むことに繋がるでしょう
インターネットも参入障壁が下がってこそこれだけのビジネスが誕生した次第です.
ぶっちゃけ儲からない事は長続きしません.歴史がそれを示してます.


自分が思う最悪の状況は
日本人が大好きな「危険を冒してやり遂げた!」という
無意味なヒロイズムと浪花節で優秀な人材を危険に晒すことです.

今,はやぶさで国民の支持を得たJAXAはその方向に舵を切りうると考えています.
なんせJAXAは宇宙に行きたい人々の一大集団ですから.

彼らには十分宇宙飛行を実現させる実力があると思います.
当初は成功により称賛を受けるでしょう.
しかしそのうち飽きられていくでしょう.
(アポロ計画も飽きられ予算がつかなくなって中断)
万一失敗でもした日には一気に醒めやすい世論に手のひらを返される可能性も高いです.
それでいてなし得たことは世界の二番煎じに過ぎないのです.

それなら今の日本にしかなしえないことをやってほしいと思うのですが…


同じような事を考えてる人はいるようで
NASAにRobonautというプロジェクトが結構昔からあります.

噂によれば宇宙飛行士たちから
「俺たちの仕事を奪う気か!」
と総スカンを食い干されてたらしいですが
最近GMとの協業が発表され活気づいています.
(あ,Twitterアカウントまでできてる…)

彼(彼女?)の活躍にも注目ですし,
叶うことなら自分の知識と腕でなんとか関れないかと切歯扼腕する日々が続いています.

さて,この話題で友人たちと議論が白熱してくると
酔った友人はこのような殺し文句放ってきます.

「ならお前宇宙に行きたくないんか!」

結果こっちも(ビール一杯で)酔いが回ってこう吠えることになります.

「そりゃ行きたいさ.
 でも俺体力も協調性もないし重量オーバな俺が宇宙飛行士に選抜されるわけねぇだろ.
 この方法が宇宙に行く一番近道なんだよ.」

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